セルフチェック
気になる症状があればセルフチェックをしてみましょう。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治療法として知られているCPAP(持続陽圧呼吸療法)は、無呼吸の解消だけでなく、日中の強い眠気や睡眠中のいびきなどの症状に対して改善効果があります。しかし、マスクをつけることで逆に寝つきが悪くなるのではないか、費用はどのくらいかかるのかなどの疑問、不安もあるでしょう。今回はCPAP療法の疑問、不安にお答えします。
Q.睡眠時無呼吸症候群と診断され、CPAP療法を勧められました。どのような治療でしょうか。
A.CPAPとは、continuous positive airway pressure(持続陽圧呼吸療法)の略で、睡眠時無呼吸症候群に対する治療法として1998年から健康保険適用となっています。
CPAP療法では、専用の機器本体と空気を送るチューブ、鼻につけるマスクを使用します。患者さんごとに決められた数値(圧力)を設定し、マスクを装着して就寝すると、睡眠中に一定の圧力でマスクから空気が送られます。
睡眠時無呼吸症候群は、寝ている間に何度も空気の通り道である気道がふさがってしまうことで呼吸が止まってしまい、酸素濃度が低下する病気です。CPAP療法は、専用のマスクから空気を送り続け、気道内の圧を維持することで閉塞を防ぐことができ、睡眠時無呼吸症候群の症状を改善します。
CPAP療法の詳しい解説はこちら
Q.CPAPのマスクは息苦しそうに見えるのですが、寝つきが悪くなったりマスクが気になって眠りが浅くなったりすることはないのでしょうか。
A.CPAP療法のマスクは、最初は違和感があるかもしれません。しかし、それ以上にこの治療がうまくいった場合に、睡眠の質が向上し、朝すっきりと目が覚めることができるメリットのほうが大きいといいます。また、何よりもCPAP療法を開始することで睡眠時の無呼吸が解消され、日中の眠気や夜間のいびき、起床時の頭痛などの症状が改善されます。また、成人の睡眠時無呼吸症候群は高血圧や脳卒中、心筋梗塞などのリスクを高めることがわかっていますが、CPAP療法を開始することでこうした病気による死亡リスクを睡眠時無呼吸症候群のない人と同等レベルまでに低下させることができます。
Q.CPAP療法にはデメリットはないのでしょうか。
A.CPAP療法は睡眠時無呼吸症候群を根治するものではなく、あくまで対症療法ですので、睡眠時に必ず行う必要があります。
マスクから空気がもれてしまうと適切な空気圧をかけることができなくなり、十分な効果が得られません。空気もれを防ぐためにマスクを強くしめつけてしまうと皮膚に跡がついたり、皮膚炎をおこしたりすることがあるため、注意が必要です。
また、CPAP療法は鼻呼吸が基本となるため、鼻炎などによる鼻づまりが強いときには使用できず鼻治療が必要です。また、睡眠中に口を大きく開けてしまう人は開口を防止するするチンストラップと呼ばれる専用のバンドを使う必要があり、なかにはそれを窮屈に感じる人もいます。
毎日メンテナンスを行う必要があること、また旅行や出張時にも持参する必要があるといった点もデメリットではありますが、睡眠時無呼吸の症状が強く日中の眠気やいびきなどの症状に悩まされている人にとっては睡眠の質が向上することによるメリットは何より大きいといえるでしょう。
CPAP療法を受けている患者さんから寄せられた質問とその回答はこちら
Q.CPAP療法を受けたいのですが、健康保険は使えますか?
A.睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合、検査を受けてAHI(無呼吸低呼吸指数:1時間あたりの無呼吸および低呼吸の合計数)を調べます。睡眠時無呼吸症候群は、AHI5~15が軽症、15~30が中等症、30以上が重症となります。CPAP療法は、検査を受けてAHIが20以上で日中の眠気などがある場合の標準的な治療であり、該当する患者さんは健康保険が適用され機器をレンタルすることができます。
CPAP療法に使用する機器のレンタルを受けるためには毎月の通院が必要で、治療費としてはレンタル料を含めて3割負担の患者さんで1か月約5,000円程度、1割負担の患者さんで約1,500円程度となります。レンタル費用には、メンテナンスやマスクなどの消耗品なども含まれています。
睡眠時無呼吸症候群の患者さんは、睡眠時無呼吸以外にも生活習慣病などを合併しているケースが多いため、合併症の管理も含めて定期的な診察を受けることが大切です。
睡眠時無呼吸症候群の治療についてはこちら
<参考資料>
・日本呼吸器学会:市民のみなさまへ 呼吸器Q&A
https://www.jrs.or.jp/citizen/faq
・日本呼吸器学会:睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020
https://www.jrs.or.jp/publication/file/guidelines_sas2020.pdf