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快眠コラム

睡眠と仕事効率

睡眠豆知識
白濱 龍太郎 先生
RESM 新横浜 睡眠・呼吸メディカルケアクリニック 院長
白濱 龍太郎 先生

なぜ、人は眠るのか?人は眠らなくても生きていけるのでしょうか。一体、私たちは眠っている間、何をしているのでしょうか。一昔前は、睡眠時間を削って仕事をするビジネスパーソンがもてはやされていましたが、現在、一流のビジネスパーソンは、睡眠時間を削るのではなく、十分な睡眠をとることが、最高のパフォーマンスにつながることを知っています。また、それは科学的にも実証されはじめています。十分な量と質の睡眠。これこそ、現代に求められるビジネススキルなのです。

睡眠不足による弊害

睡眠時間が短いことや徹夜を自慢する風潮がかつてはありました。しかし、睡眠が不足することによる弊害は、いたるところで現れてきています。というのは、睡眠の絶対量が減ると、判断力、反応時間、状況把握能力、記憶力、コミュニケーション能力など、人としてのあらゆる機能が低下するからです。 睡眠の大事な目的はなんでしょうか。それは、昼間にフル稼働した脳をリセットすることです。記憶を定着させたり、再構成したり、認知機能をメンテナンスしたり、それから神経細胞をケアしたり。脳には、寝ている間にやるべきことがたくさんあります。それに、睡眠には、まだ解明されていないことも山ほどあり、私たちの気分や幸福感、創造性、人間関係にも深く関わっているのではないかといわれています。

10代のころは受験勉強だったり、友達と遊んでいて朝になっていたり、社会人になってからは仕事で何度も徹夜することがあるかもしれません。徹夜すると、人の体には異変が起きます。オーストラリアの 研究によると、人は17~21時間起きていると、ビールを1、2本飲んだ、酒気帯び運転の状態に近い認知能力になるとされています。また、この状態では脈拍は速くなり、体温も上昇して体調の変化を感じます。さらに、理性も薄れていくといわれています。しかも、寝ていないということは、脳のリセットも疲労回復もできないということです。そんなことを続けていると、脳だけでなく、自律神経系、免疫系、内分泌系、血流や血圧など体のいろいろな面に悪影響をおよぼします。仕事においても、睡眠不足が原因で単純ミスをしてしまうのは当然と考えられます。

経済協力開発機構(OECD)の統計(Gender Data portal 2019)によると、1日のうち睡眠に費やす時間は、欧米諸国が500分を超えるのに対し、日本は最低水準の442分でした。日本において、厚生労働省の「国民健康・栄養調査」(2017年)によると、「睡眠で休養があまり取れていない」または「全く取れていない」と答えた人の割合も30.9%(40代)、28.4%(50代)、27.6%(30代)と多くの人が睡眠不足に陥っている実態が浮き彫りになりました。

睡眠改善のメリット

睡眠時間を伸ばすと、昼間のパフォーマンスが大きく変わってきます。脳がしっかり整理され、体の疲労も回復することで、学習能力や記憶力も上がって、今以上のパフォーマンスを発揮できます。

アメリカ・ノースカロライナ州にあるデューク大学では、2004年から午前8時に始まる授業をなくして、最初の授業を8時半以降にすることを決めました。ペンシルベニア州立大学も2005年に8時開始の授業を減らしました。理由は、8時から授業をするよりも9時ぐらいから授業をしたほうが、学生はしっかり眠れて、モチベーションが高いことわかったからだそうです。

イギリスのエクセター大学の研究では、思い出せなかったことを思い出す確率が、十分な睡眠をとることで2倍近くに高まることがわかりました。これは、睡眠中に記憶がきちんと整理されていることを裏付けるような報告です。

世界保健機関(WHO)も睡眠は「人間の基本的欲求であり、健康を維持するための最も有効な行為の一つ」と定義しています。効率よく仕事や家事をこなすためにも、睡眠の時間や質を意識しましょう。