セルフチェック
気になる症状があればセルフチェックをしてみましょう。

睡眠は私たちの心身を回復させる重要なものです。「毎日寝つきが悪く朝がつらい」「夜中に何度も目が覚める」「日中の眠気で仕事が手につかない」「家族にいびきがうるさいと言われた」など、睡眠の悩みがあると生活にもさまざまな支障をきたします。しかし、睡眠の悩みは何科で相談すればよいのか迷ってしまう人もいるのではないでしょうか。
疲れているはずなのになかなか寝つけない、会食でお酒を飲み過ぎた日はいびきが出るなど、睡眠に関連する症状を感じることは珍しいことではありません。身体の疲れがたまって筋肉が普段よりも緩まって気道が狭くなっていびきをかいたりすることは誰にでも起こることです。就寝前の飲酒は睡眠の質を低下させる原因とはなるものの、過度の常用ではなく一時的なものであれば、それ自体が長期の健康リスクを高めるものではないと考えてもよいでしょう。
しかし、毎日激しいいびきをかいていたり、途中でピタッと止まりまたいびきが再開されるといったことを繰り返したりしている場合には病気の可能性があり、治療が必要です。
睡眠は心身の回復に必要な時間に個人差があるといわれていますが、日中に強い眠気があるという場合は、質または量のいずれかで睡眠が不足していると考えられます。まずは、できるだけ同じ時刻に寝床に入り、6時間~8時間の睡眠を心がけましょう。それでも日中の眠気が抑えられないという場合には睡眠の質に問題がある可能性があります。
睡眠の質を低下させる要因にはさまざまなものがあります。眠ろうとしても眠れない不眠の場合には、ストレスや生活習慣、精神疾患、アルコールなどの原因が考えられます。また、薬剤の副作用などが原因で寝つきが悪い、夜間に何度も起きてしまう、早朝に目が覚めるなどの症状が出ることがあります。そのほか、不規則な生活、長時間労働などが睡眠の質を低下させることもあります。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)やナルコレプシーといった病気が原因の場合もあります。いずれにしても、睡眠の障害は社会生活にも支障をきたし、生活の質(QOL)も低下します。原因を明らかにし、その解消をはかることが重要です。
大きないびきや日中の過度な眠気に悩んでいる場合にはかかりつけの内科、もしくは最寄りの耳鼻咽喉科や呼吸器内科で相談しましょう。眠れない、寝つきが悪い、夜間に何度も目が覚めるといった睡眠の悩みであれば、心療内科などで相談します。
また、睡眠が人の健康に大きな影響を与えるものであることの認識が広まってきたことで、睡眠の症状や悩みに専門に対応する「睡眠外来」を標ぼうする医療機関も増えています。睡眠外来では、眠れない、寝つきが悪いといった睡眠の悩みからいびき、日中の過度な眠気などの診断、検査、治療を行っています。
●確定診断には宿泊による検査が必要
日中の過度な眠気やいびきに対しては、医師による問診のほかに専門の検査が必要となります。最初の検査は医療機関から検査機器を借りて自宅で行います。検査機器をつけた状態で就寝し、一晩の無呼吸の頻度を記録します。簡易的な検査方法ですが、この検査だけでAHI(無呼吸低呼吸指数)が40以上で日中の眠気などの明らかな症状がある場合にはCPAP療法の適応となります。
また、確定診断のためには入院でより詳しい検査を行う必要があります。専門のスタッフが一晩観察しながら睡眠と呼吸の状態を調べるもので終夜睡眠ポリグラフ(PSG)検査といいます。夜に医療機関に入院して夜間に検査を受けて朝帰宅するという方法で行われることが多いため、仕事を持つ人でも支障なく受けることができます。ただし、この検査は専門の入院施設がある医療機関でなければ受けることができません。
専用の入院施設は、いわゆる入院病床とは異なり、リラックスして過ごすことができる個室のホテルの一室のようなつくりになっているところが多くなっています。センサーを装着して就寝することにはなりますが、検査自体は痛みを伴うものでもありません。
近年は睡眠時無呼吸症候群が多くの生活習慣病との関連があること、死亡率を高めるリスクとなることなどがわかってきており、睡眠時無呼吸症候群の治療を行う医療機関は増えています。かかりつけの耳鼻咽喉科や呼吸器内科がない人、近隣で睡眠障害の診察をする医療機関があるかどうかわからない場合には、SAS netの医療機関検索を活用しましょう。
<参考資料>
・日本呼吸器学会:市民のみなさまへ 呼吸器Q&A
https://www.jrs.or.jp/citizen/faq
・国立がん研究センターがん対策研究所予防関連プロジェクト:多目的コホート研究(JPHC Study)睡眠時間と死亡リスクとの関連について
https://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/8490.html
・日本呼吸器学会:睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020
https://www.jrs.or.jp/publication/file/guidelines_sas2020.pdf