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快眠コラム

夜になると咳が出る~喘息で眠れないときは

睡眠豆知識
千葉 伸太郎先生
太田総合病院記念研究所太田睡眠科学センター/外科学センター所長
千葉 伸太郎先生

喘息は、気道に起こった炎症によって咳や痰、呼吸が苦しくなるなどの症状が現れる病気で、呼吸時にゼーゼーという音、ヒューヒューといった音といった音(喘鳴)がみられることがあります。外部からの刺激で気道が過敏になり、発作的に気道が狭くなることで強い喘息症状が繰り返し起こるのが特徴です。発作は夜間や早朝に起こりやすくなることから、睡眠の妨げになることがあります。

子どもが夜になると咳が出るのは何が原因?

子どもが夜間に咳込んでいる場合、喘息の可能性を疑う保護者は多いでしょう。実際に夜間に発作が出て咳込むことは喘息にもみられる症状です。喘息は夜に悪化しやすく、それが睡眠を妨げる原因となることがあります。それによって子どもが学校の授業に集中できなくなったり、落ち着きがなくなったりすることもあります。

一方、寝ているときに突然咳込む症状の原因が睡眠時無呼吸症候群(SAS)の場合もあります。睡眠時無呼吸症候群と聞くといびきや呼吸が止まるといった症状が特徴的ですが、とくに子どもの場合には呼吸が浅くなることによる息苦しさと、その後むせるような咳の症状として現れることもあるのです。

早めに医療機関を受診し、咳の原因が何かを確認したうえで適切な治療を受けることが重要となります。

気管支喘息の治療と睡眠

気管支喘息は健康な人と変わらない生活を送ることや、夜間や早朝の咳、呼吸困難がなく夜間に十分な睡眠がとれること、呼吸機能を維持することなどが治療の目標となります。気道の炎症を抑えるために吸入ステロイド薬や気道を広げる薬などを使って症状が起こらないようにします。そのうえで症状が起きてしまったときには短時間で効果が現れる吸入薬などを使います。

治療は発作が起きたときだけでなく、症状が起きていないときにも継続的に行うことが重要です。発作が起こるたびに徐々に炎症が悪化し、発作が起こりやすくなります。炎症が強くなる状態が繰り返されるたびに気道は狭くなっていくため、治療によって悪循環を防ぐことが重要となります。

●アレルギーマーチを防ぐ

喘息はアレルギー症状のひとつですが、新生児のときに発症し、年齢を重ねるなかでアトピー性皮膚炎や食物アレルギー、アレルギー性鼻炎など、さまざまなアレルギー症状を発症していくことがあり、これをアレルギーマーチと呼びます。アレルギーの病気はリズムがあり、夜間に症状が増悪しやすくなります。夜間の症状増悪は睡眠の質の低下や、睡眠時無呼吸の増悪にも影響するため、治療を継続することが大切です。

寝ると咳が出るときの工夫

喘息は、適切な治療を受けるとともに、喘息の発作が起こりにくい環境を維持することが重要です。喘息はダニなどのアレルギーを引き起こすアレルゲン物質や感染症、タバコの煙などの汚染物質がある環境で発症しやすくなります。本人だけでなく同居家族は禁煙し、室内は清潔を保つように努めましょう。

寝るとき室内が寒すぎたり乾燥しすぎたりしていると、それが刺激となって咳が出ることがあります。暖房や加湿器などを使い、室内の温度、湿度を調整しましょう。仰向けで寝るのがつらいときには横向きになったり頭をあげたりと、楽になる姿勢をとるようにします。

<参考資料>

・日本呼吸器学会:市民のみなさまへ 呼吸器Q&A
https://www.jrs.or.jp/citizen/faq

・日本呼吸器学会:市民のみなさまへ 呼吸器の病気
https://www.jrs.or.jp/citizen/disease

・日本小児アレルギー学会:患者さん向け小児ぜん息治療ガイドライン 小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2020
https://www.jspaci.jp/assets/documents/childhood-asthma-guideline.pdf